
通りのはずれ、信号をわたった石川町駅の裏通りもまた有名な洋食店、古着屋や古本屋のある楽しい通りです。その日はいつになくその道の先、高速下の川沿いに一番のはずれまで歩くことにしました。滅多に歩かない小道のはずれは、さらに人通りが少なく閑散として寂しい感じがします。そんな通りが終わりかけるところに小さなギャラリーがありました。

好奇心で窓ガラス越しに中を覗いてみると、絵本の原画を展示しているようでした。電車を表紙にした絵本が窓際に正しく並んでいます。察したのか内側から扉がひらいて「どうぞ」と若い女性に招き入れてもらいました。女性は作家らしく、偶然とおりかかって足を止めたと話すと「ゆっくり見て行ってください」とやさしく語りかけてくれました。小さなスペースの壁にはアクリル絵具特有の発色で描かれた原画が、はなしの順序に並んでいます。中の一枚、電車の車内を描いた絵に目が止まりました。始発電車の中ではしゃぐ少年と父親の絵、表はまだ暗いのに車内の照明や吊り広告が明るい色彩を放つ絵です。絵本は、父親と少年の二人が夜明け前の電車に乗って友達を見送りに空港まで行く話です。なぜか、その絵が心に余韻を残しました…。
どのくらいの時間だったでしょうか。辺りも暗くなりかけクローズの準備をしていのに気づきました。挨拶も早々に、少し名残惜しくも散歩の終わりとギャラリーをあとにしました。
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